COLUMN | POT – PLANTS AND LANDSCAPE (合同会社パワーオフタックル)

2018.02.12
植物の感じる光(光合成)

前回前々回のブログでは人の目の感受性について理解しました。
となると、次なる疑問は、
「じゃあ、植物はどんな波長の光を利用しているの?」
いよいよ植物の感じる光に移ります。

 

○植物の感じる光

人の目は、波長750 ~380 nmの範囲の光を可視としますが、植物はどんな波長の光に対して感受性があるのでしょうか?
感受性という言葉があいまいなので、ここで一度、「植物の光に対する感受性」を、「(陸上植物が)光合成のために吸収する光」という言葉に置き換えて考えます。(注1)

 

○光合成色素、クロロフィル

陸上植物はクロロフィルという光合成色素から、光合成のために必要な光を吸収します。下の図に、クロロフィルが吸収する光の波長を示します(Wikipedia「Photosynthesis」より転載)。
図からは、クロロフィルa、およびクロロフィルbという2種類の光合成色素が光を吸収していること、そして、波長700 nm~600 nm、波長500 nm~400 nmの間にそれぞれ1つずつピークを持つことが読み取れます。
波長700 nm~600 nmの光は、人の目から見て「赤っぽい光」、波長500 nm~400 nmの光は「青っぽい光」です。

“陸上植物は太陽光のうち、「赤系統の光」「青系統の光」を利用して光合成している。その中間、「緑系統の光」は光合成にほとんど利用されない。それが陸上植物の葉が緑色に見える理由である!!”
どこからかそんな声が聞こえてくるような気がします。
う~ん、惜しい。僕もそんな風に理解していた時がありました。
どこが惜しいか、わかりますか?
実は、先の文章の「ほとんど利用されない」の所に、少し問題があります。

 

○実際には緑色の波長の光も吸収されている

下の図を見てください(山崎 巌(2011)『光合成の光化学』より)。
植物の葉の光吸収率について、80種の植物種から実際に計測し、得られた光の吸収率のデータです。グラフをみると、確かに緑色にあたる波長550 nm付近の光について吸収率の落ち込みが見られます。

ただ、前出のグラフとはすこし印象が違いますよね。ほとんど吸収されないわけではなく、70%程度は吸収されているようです。グラフから読み取れる吸収率のピークが90%程度であることを考えると、決して極端に吸収率が悪いわけではないことがわかります。

光が植物の葉を通過するとき、実は、光は葉の内部で反射を何度も繰り返すことになります。クロロフィルは、確かに赤や青色の光に比べ、緑色の光を吸収しにくいのですが、それでも緑色の光を吸収する確率は0%ではありません。光が葉の内部で反射を繰り返すうち、吸収率の低い緑色の波長の光でも最終的に70%程度の光がクロロフィルに吸収されることとなるのです。

 

○まとめ

陸上植物は、波長400 nm~700 nmの範囲の光を光合成に利用している。
クロロフィルに吸収されにくい緑色の波長の光でも、最終的に70%程度が植物体に吸収される。

 

植物工場の様子をテレビなどでも時折、目にするようになりました。ケースの中の植物は赤色LED、青色LEDの光をあてられて育てられています。採算性を考慮しなければならないため、植物にとって利用のしやすい、合理的な光源を選んだ結果なのだと思います。
ただ、光合成に限っては、緑色の波長の光を含んだ白色LEDの場合でも、極端に効率が悪いわけではなさそうです。白色LEDの低廉化や入手のしやすさを考えると検討の余地は大きいと考えます。

 

参考文献)
園池 公毅(2008)『光合成とはなにか―生命システムを支える力 』
山崎 巌(2011)『光合成の光化学』

 

注1)水の中の藻類は、クロロフィルだけではなく他にも光合成色素を持つため、光合成のために利用する波長の範囲はさらに広がります。本文中では「植物」=「陸上植物」として取り扱うこととしました。