先日、縁あって宅地開発についての相談を受けました。
ある進行中の宅地開発プロジェクトがあり、その開発コンセプトを取りまとめている方からの相談です。プロジェクトでは「自然環境をいかした街づくり」というコンセプトが掲げられており、今回の相談は、コンセプトを実際の街区デザインに落とし込むにあたって、植栽や造園の立場から何かいいアイディアはないだろうか? というものでした。
「緑地協定」のような基本的な話はもちろん、区画道路に植栽地を盛り込む工夫や、緑地を効果的に見せる方法など、実現するかどうかは別として、話題はふくらみ、面白い話し合いになったと思います。
ただ、最後に投げかけられた質問が強烈でした。
「ところで、実際のところ、エノキさんにとって自然が身近にある意義ってなんですか?」
これってすごい質問です。答え方によっては、僕の仕事の存在意義が危うくなりそうです。こんな質問は、できれば、お酒の入った席でお願いしたい。
その時、僕が返した答えはこんな感じだったと思います。
「僕が小さかった時、例えば、友達と遊んでいて、ちょっと疲れてその輪から離れ、植物でヒマつぶしをした体験。マメツゲの実をつぶして指先が紫色になってびっくりしたり、猫じゃらしでスプリングマンとモンゴルマンの戦い(キン肉マンのエピソード)を再現したり。笹舟を作って用水路を延々、追いかけたり。。 家族の輪とも友達付き合いの輪とも少し離れたところで得られた体験。大人になる過程で、何かの役に立ったとは全然思えないけれども、できれば、自分の子供にも同じような体験をさせてあげたい。だから、特に、人生の中で子育てをする時期は、自然が身近な環境を選びたい」
全然、模範解答じゃない(笑) こんなの宅地の売り出しパンフレットには絶対、載らない。
植物や自然が持つ価値のひとつに「非利用価値(non-use value)」があります。食料や木材、CO2吸収能などは植物が直接的に持つ価値です。対して、利用はできないが存在するだけで生まれる価値は「非利用価値」に分類されます。生物多様性が持つ価値などはその代表です。
さて、さきの回答では広い意味での、植物の持つ「非利用価値」を伝えたかったのだと思います。全然、うまくまとまっていないですね。。
言葉には置き換えにくいけれども、植物や自然が確かに持つ価値。それを言葉や空間デザインに変換する技術。植物のもつ価値を整理し、的確に置き換え、人に伝えていくことができれば、仕事のアウトプットはまだまだ変化していきそうです。日々研鑽。