各所で早咲きの桜の開花ニュースなどが届き、温かい季節になってきました。
それにつけても記憶に残るのは今年の寒波。気象庁の発表では、西日本で32年ぶりの寒い冬だったそうです。今年で40歳の僕にとっては、物心がついて以来、初めて経験するぐらいの大寒波といえそうです。
あまりの寒さで身の回りの植物にも悪い影響が見られました。事務所においてある観葉植物にも、低温障害の症状が見られました。
〇観葉植物が寒さに弱い理由
観葉植物はなぜ寒さに弱いのでしょうか?
観葉植物は熱帯地方を原産とする常緑植物です。一方、僕たち、日本が属する温帯地方にも常緑性の広葉樹は見られます。どちらも同じ常緑性の広葉樹であるのに、なぜ観葉植物は温帯の冬を屋外で過ごすことができないのか? 植物における低温障害というとまず第一に、霜などによる「凍害」が浮かびますが、なぜ、観葉植物の場合、これより高い気温(5℃前後)でも障害が発生するのか? これは僕にとって、植物に携わる仕事を始めてからの大きな疑問でした。
観葉植物がなぜ低温に弱いのか? この疑問に答えてくれる記述や文献は意外に少ない。
というか、僕が持っている植物関係の本の中で、このことに言及している本は1冊だけです。
以下に、その本からの抜粋を引用します。
亜熱帯や熱帯の植物を(中略)冷却すると、膜脂質(membrane lipid)が液状から固体状に相変化、その結果、ミトコンドリア膜(mitochondrial membrane)と結合している呼吸酵素(respiratory enzyme)のような膜結合酵素(membrane-bound enzyme)を不活性化するという事実がこれまでに認められている。一方、温帯種の膜脂質では不飽和脂肪酸(unsaturated fatty acid)の割合が高く、その膜はより安定な液相を維持しており、低温に対する障害を受けにくいものと考えられている。
出典:A.H.Fitter / R.K.M.Hay(1985)『植物の環境と生理』
「観葉植物などの熱帯系植物は、その膜脂質に飽和脂肪酸を多く含むため、比較的高い温度(5℃前後)でも膜脂質が固まりやすく、障害が起こりやすい」
オリーブ油を冷蔵庫に保存すると固まってしまう、そんなイメージで理解しやすいかと。
もちろんその他の要因(葉の厚さや大きさなど、、)も影響してくるのでしょうが、観葉植物が寒さに弱い原因を理解するためには、「膜脂質に含まれる飽和脂肪酸の割合」、この視点が重要な出発点となりそうです。
それにつけても、あたたかくなってきましたね。