2018.03.26

水鉢をきる

温かくなり、あちこちで現場が動いています。
先週は、あるお庭で高木の植栽工事を進めていました。

その時に、おやっと感じたこと。ちょっとした違和感。

それは、応援で駆けつけてくれた職人さんに、
「水鉢、切っといて~!」
と、お願いした時のことでした。

〇そもそも水鉢とは?

「水鉢」という言葉になじみのない方が多数だと思います。水鉢といっても、スイレン鉢のような、水をためるための陶器の鉢ではありません。
水鉢とは、高木の植栽の際、確実に樹木の根系に水をいきわたらせるための、一時的な土手の事を指します(→画像検索:水鉢とは?)。
業者さんや地方によって様々ですが、当社では水鉢を作ることを ”水鉢を切る(きる)” 逆に、水鉢を崩すことを ”水鉢を外す” と、呼んでいます。

造園関係の業者であれば、「水鉢」を知らない人はおそらくいないでしょう。先ほどの作業時、応援で駆けつけてくれた職人さんも、二つ返事で水鉢を切ってくれました。

では、なぜ「おやっ」と感じたか。どこに違和感をおぼえたのでしょうか?

〇水鉢を切る位置

言葉では説明しにくいため、簡単なイラストを添えてみます。
下図、Aが応援の職人さん製の水鉢、Bが当社基準の水鉢です。

どこに違いがあるか、ご覧のように水鉢を切る位置が違います。
Aは植穴の境界上に水鉢をきっているのに対し、Bでは根鉢の上にかかるように水鉢を切っています。

一般にはAの位置に水鉢を切ることが多いのです。一方、当社ではBの位置に水鉢を切るようにしています。ずいぶん以前からBの位置で水鉢をきることが当たり前となっていて、久しぶりにAの位置に水鉢をきっているのを見たため、冒頭のような違和感を感じたのでした。

〇水鉢はどこに切るのがいいのか?

またまたイラストで、それぞれの水鉢に水やりしてみます。

Aでは根鉢だけではなく、改良土にも水が流れていきます。そして、改良土には水はけのよい土を使うため、大半は改良土に流れていく可能性があります。一方、Bでは、水は確実に根鉢を通って流れていきます。

僕がBの水鉢を採用する理由、それは根鉢に対して確実に潅水が行えるからです。樹木の根鉢は、移植の際、乾燥のストレスにさらされます。そんな根鉢に対し、迅速かつ確実に潅水を行えるのはBの根鉢だと考えます。確かにAの水鉢のほうが水をためる容量は大きいのですが、そのことに関しては、Bの水鉢でも回数を増やすことで対応できると考えます。

繰り返しになりますが、Aの水鉢のほうが一般的な水鉢です。Aの水鉢だから移植後の樹木が枯れるということではありません。

僕がBの水鉢の方法を知ったのは、確か、植木の生産者さんからだったと思います(昔の事過ぎて、誰からだったのか思い出せない。。)
その時、その人の理由・理屈を聞いて、すぐにBのやり方に変更しました。Bのタイプの水鉢のほうが、その理由に納得できたからです。

生き物が相手の技術なので、絶対的な正解はないのです。ただ、正解がないからこそ、少しでも納得のいく方法で植え付けてあげたい。と、そんな風に考えているわけです。

 

長文失礼しました。
駆けつけてくれた職人さんのおかげで、何とか工期を守れそうです。
職人さん、いつもありがとうございます。