ある空間に植物を迎え入れる時、おしゃれな植物を選ぶことも大切ですが、その事と同じくらい大事なこと。それは、その空間が植物の生育のために十分な条件を備えているかを判断することです。 植物には本来、自然に自生している環境があります。そして、必要とする生育条件(日照量や降水量、土壌の質など)はそれぞれに異なります。たとえば、観葉植物は、その幼少期を、厚い樹冠によって日光を遮られている熱帯地方の森ですごすため、結果として耐陰性を獲得した植物だと言えます。 植物の多様性をふまえ、その場所の環境にあった植物を選ぶこと。あるいは、植物にあわせて、場の環境を整えてあげること。それはひょっとすると、私たちが暮らす環境そのものを見つめ直すということなのかもしれません。
身近に自然を感じることの少なくなった現代だからこそ、景観において植物の果たすべき役割は、ますます大きくなっていると感じます。身の回りに常に「みどり」を感じていたい、そんな気持ちは人間にとって自然な欲求なのでしょう。景観はそれを構成する要素(植物などの自然、人の手の加わった構造物など)だけでは成立しません。景観とは、それを眺める人がいてはじめて成立するもの。視る人がどのように心を動かされるか、それが景観を評価しうるたった一つの指標です。景観をデザインするとき、その場所を訪れる人がどのように感じるか、時間を経て10年後、20年後、再びそこを訪れた時、何を想うか。そんなイメージを汲み取りながら、ランドスケープを形づくっていきたいと考えています。
1978年、石川県金沢市生まれ。
神戸大学発達科学部を卒業後、兵庫県立淡路景観園芸学校にて植物や造園技術について学ぶ。株式会社空間創研(京都市)にて景観デザインについて広く携わり、その後、有限会社和想(大阪市)にて、ランドスケープの設計、施工を手掛ける。樹木医(登録番号:2105号、2012年資格取得)。
2012年、独立。2015年、合同会社パワーオフタックルを設立。社名の「パワーオフタックル(POT)」は、大学時代に熱中していたアメリカンフットボールの、最も好きだった戦術から。